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1年生5人、2年生3人、3年生1人!
少子化による部員数の減少、教員の働き方改革による練習時間や日数の削減、さらにはコロナ禍……。
吹奏楽界に吹き荒れる逆風の中、特に小学校や中学校ではマーチングに取り組むことが困難になっている学校がたくさんあります。
そんな中、たった9人でマーチングコンテストに出場している学校があります。
世界遺産・石見銀山があることで知られる島根県大田(おおだ)市の、大田西中学校吹奏楽部です。
大田西中では、3年前には30人弱いた吹奏楽部員が、今年度は12人(1年生5人、2年生3人、3年生4人)に減少。
通常は3年生は吹奏楽コンクールで引退となり、マーチングコンテストには新チームが参加。今回は1、2年生で8人しかいないため、3年生が1人残留してドラムメジャーを務めています。
また、コンクールまではクラリネットだった部員がテューバを、打楽器だった部員がサックスやトランペットを演奏するなど、短い期間に新しい楽器の演奏と動きの両方を習得し、9月17日に行われた島根県大会に挑戦しました。
編成は、ドラムメジャー(3年)、ピッコロ(2年)、B♭クラリネット(1年)、アルトサックス(1年)、フリューゲルホルン(1年)、ユーフォニアム(2年)、テューバ(2年)、スネアドラム(1年)、テナードラム(1年)。
楽曲は《GO WEST! 2023》です。
アメリカの西部劇の音楽を軸に、アメリカ民謡を織り交ぜた曲。大田西中がリスペクトする長崎県のマーチングの名門、雲仙市立小浜中学校吹奏楽部が昨年取り組んだ曲です。この「WEST」の部分には「大田西」の「西」がかけられているそうです。
顧問の角国孝広先生によれば、実際にマーチングの練習にかけられた日数は1カ月もなかったとのことです。
島根県は、高校では出雲北陵高校や県立出雲商業高校、県立松江商業高校、県立出雲高校などマーチングの強豪がありますが、中学校では今年の県大会に出場したのが大田西中のみ。
そんな中、審査員からは「金賞」の評価を受け、島根県代表として10月8日に行われる中国大会への出場が決まりました。
限られた期間での練習、しかも中学1、2年生を中心とした9人での活躍は、全国の少人数バンドや小中学校のバンドに勇気を与えることでしょう。
先生と部員たちからの熱いコメントをご紹介
それでは、そんな大田西中学校吹奏楽部のみなさんから熱いコメントをいただいていますので、ご紹介したいと思います。
●顧問・角国孝広先生
昨秋、大阪城ホールでのパレコン全国での小浜中学校吹奏楽部のマーチングを鑑賞し、少人数を感じさせない、場内の空気を惹きつける、魅力的なパフォーマンスに感動しました。春を迎え、新入部員の数が決まったところで、小浜中の森下晃英先生にご相談をし、現在のスタイルになりました。木管・金管・打楽器のバランスを考え、夏のコンクールが終わってから、ほとんどのメンバーの担当楽器の変更を行ったために、まだまだ演奏技術が安定していない中ですが、譜面を覚え、コンテを覚え、速さや表現を短期間で揃えていく作業は子どもたちもスリリングであったと思います。
しかしながら、マーチングのかっこよさを小浜中の全国大会のビデオ鑑賞したときから部員全員が理解していたので、「あんな風にできたらカッコいいな」という夢を持ちながら取り組むことができたのが効果的でした。
中国大会では、音楽をすることに人数が関係ないことを、マーチングを通じて聴衆に伝えていきたいと思います。かつて、隣の学校である大田市立第三中学校(※注・少人数で多くの楽器を持ち替えながら演奏することで全国的に有名だった「大田三中」)に勤めていた経験がまさに今、時を越え、マーチングというカタチとなって再び伝えることができることに感謝の気持ちをもってます。
●中祖さん(部長・テューバ・2年)
今回のマーチングは9人という少ない人数なので、一人ひとりが重要でした。できるだけミスが少なくなるように木管・金管・打楽器とパートごとに時間を取り、積極的に合わせるような工夫をしました。中国大会では、自分たちのベストを出し切れるよう頑張りたいです。
●小林さん(スネアドラム・1年)
人数が少ないので、一人でも欠けてしまうと音楽が成り立たなくなる苦労がありました。中国大会では、人数が少ないからこそ、みんなで曲を合わせたり、動いたりが合わせやすくなるというメリットがあります。一人ひとりが輝けるようなマーチングをめざしたいと思います。
●松本さん(フリューゲルホルン・1年)
楽器を演奏しながら動くことに苦労しました。中国大会では、大田西中吹奏楽部にしかできないマーチングやサウンドとハーモニーをつくりあげていきたいです。
●柳原さん(テナードラム・1年)
部員数が少なく打楽器の先輩がいないため、打楽器講師の先生や卒業生の先輩方などに演奏の仕方や所作、コツなどを教わったり、全国レベルの出雲北陵高校へ出向き、教えてもらったりする工夫をしました。中国大会では、もっとよい演奏演技に近づけていきたいです。
●森脇さん(ドラムメジャー・3年)
今年はコロナのときのような行動制限がないので、入場前にチーム全員で掛け声を出したり、昨年よりもバトントワリングのスピードを速めたりなど演出を工夫しました。中国大会では、県大会の反省を生かせるよう頑張りたいです。
マーチングコンテスト中国大会では、「たった9人のマーチングバンド」、大田西中の演奏・演技にぜひご注目ください。
そして、大田西中や全国各地の少人数バンドをぜひ応援してくださいね。
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