クリスマス・イブに実現した夢

12月24日、「吹奏楽の聖地」と呼ばれる名古屋国際会議場センチュリーホールで、地元・愛知の愛知工業大学名電高校(名電)吹奏楽部と北海道の旭川商業高校(旭商)吹奏楽部がジョイントコンサートを行いました。

名物顧問・佐藤淳先生が率いる旭川商業高校は過去10回全日本吹奏楽コンクールに出場したことがある北海道の名門ですが、2011年を最後に全国大会にはあと一歩届かない状況が続き、佐藤先生が定年退職を控えた今年もその夢を果たすことはできませんでした。

ところが、9月下旬にそのドキュメンタリーがNHKで放送されると、番組に感動した名電の顧問・伊藤宏樹先生から佐藤先生に「センチュリーホールでやりましょう!」との連絡が入り、クリスマス・イブのジョイントコンサートが決定しました。

旭川商業高校は12月23日、チャーター便で旭川から名古屋入り。

憧れ続けた名古屋国際会議場に到着すると、愛工大名電の部員たちから温かい歓迎を受けました。

佐藤先生もセンチュリーホールのステージに立つと感無量の表情を浮かべていました。

翌12月24日はいよいよ本番の日。

その前に両校の合同ステージのリハーサルがありました。直線距離で約1000キロ離れた2つの高校が初めての共演。しかし、それを感じさせないほどサウンドが1つになっていました。

それぞれのバンドが自分たちのやり方や音楽を主張するのではなく、お互いに音を寄り添い合わせて、名電でも旭商でもない新しいサウンドが生まれていました。

合同バンドの指揮をする名電・伊藤宏樹先生。

その後、合同バンドの状態のまま、佐藤先生の指揮で旭商がコンクール課題曲だった《吹奏楽のための「エール・マーチ」》を演奏しました。

実は、本番で自由曲《歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より》は演奏の予定があったものの、課題曲はプログラムに入っていなかったのです。

コンクール以来まったく演奏していなかったそうですが、課題曲の演奏が始まると、そこに込められた思いに名電の部員たちが感動し、涙を流す姿が見られました。そして、佐藤先生の目にも涙が……。

笑顔で《吹奏楽のための「エール・マーチ」》の指揮をする佐藤淳先生。

その様子を見て、オザワ部長は「これは課題曲・自由曲をコンクール同様に演奏すべきだ」と思い、主催である名電の伊藤先生にご相談したところ、伊藤先生は佐藤先生に「ぜひ課題曲もやりましょう!」と提案。

本番では、旭川商業高校は全国大会と同じ形で課題曲・自由曲を演奏しました。

ここに「幻の全国大会」「夢の全国大会」が実現し、吹奏楽の聖地に深い感動が広がったのでした。

オザワ部長も、自分が大好きなこの2つのバンドが共演するジョイントコンサートで司会という大役を務めさせていただきました。

このジョイントコンサートのエピソードはまた別の形で詳しく書きたいと思います。

吹奏楽が取り結ぶ絆と友情

さて、ジョイントコンサートの翌日には、愛知工業大学名電高校で交流会が行われました。

定期演奏会やアンサンブルコンテストなど、名電は非常に多忙な時期だったにもかかわらず、さまざまな飾り付けをした会場で旭商の部員たちを出迎え、もてなしました。

また、伊藤先生のはからいでCoCo壱番屋(名古屋発祥のチェーン)のキッチンカーが登場し、部員たちは美味しいカレーに舌鼓を打ちました。

オザワ部長もいただきました。ココイチ最高!

また、旭商には卒業生もサポートで同行していました。

今月発売されたばかりの『今日からはじめる! すぐできる! 吹奏楽新時代の指導メソッド』(学研プラス)を購入していただけたということで、サインをさせていただきました。

なお、この本には伊藤先生、佐藤先生の指導メソッドが収録されています。

旭川商業高校吹奏楽部のOGとも記念撮影。

そして、いよいよ旭商が名古屋を去る時間がやってくると、両校の部員たちはハグしたり、手を握り合ったりしながら別れを惜しみました。

旭商が観光バスに乗って去っていくのを、名電の部員たちは大きく手を振って見送りました。

名電からのメッセージに感激!

さて、名電では伊藤宏樹先生から、伊藤先生の地元である三重県桑名市の名物「安永餅」をいただきました。

中につぶあんが入った細長い焼き餅で、初めて食べましたが、とっても美味しかったです。

和菓子好きのオザワ部長にはたまらない一品でした。

それからもうひとつ、名電でいただいたものがあります。

それは、全部員からのメッセージカード

帰り際に幹部の皆さんが「単語カードみたいですけど(笑)」と言いながら手渡してくれました。

愛知工業大学名電高校吹奏楽部の今年度の部長・副部長の皆さん。

先ほども書きましたが、名電はまず自分たちのクリスマスコンサート(12月23日)があり、旭商とのジョイントがあり、旭商をもてなすためのさまざまな準備がありました。旭商が帰った後には片付けもありましたし、年明けには最大のイベントである定期演奏会を控え、アンサンブルコンテストもあります。

見ているだけでも大変そうなのが伝わってくるのに、わざわざオザワ部長のために全員が手書きでメッセージを書いてくださったのが感激でした。しかも、先生に指示されたのではなく、部員自らの発案でこういったことをやっているのが素晴らしいです。

聴く人の心にスッと素直に入り込み、感動を与える名電サウンドはきっとこういったところからも生まれてくるのでしょう。

もちろん、メッセージはすべて読ませていただきました。

分厚いです!
心温まるメッセージにエールをもらいました!

愛知工業大学名電高校吹奏楽部、旭川商業高校吹奏楽部、2つのバンドの素晴らしさが身にしみて感じられた3日間でした。

そして、やはり吹奏楽は良い。

それを多くの人々に伝えていくのが自分の使命だと改めて思いました。




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