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吹奏楽部員たちに活躍の場を!
島根県出雲市といえば、歴史ある出雲大社はもちろんのこと、「吹奏楽王国」としても有名です。
名指導者やプレイヤーを生み出してきた出雲市立第一中学校をはじめ、出雲北陵高校、県立出雲高校、出雲市立平田中学校、マーチングの名門として知られる県立出雲商業高校など、全国レベルの活躍をする学校が多数存在しています。
そんな「吹奏楽王国・出雲」も今年は新型コロナウイルスの影響を受けました。他地域と同様に吹奏楽コンクールやマーチングコンテスト、様々なコンサートやイベントも中止となり、吹奏楽部員たちは発表の場を失いました。
そこで、出雲の先生方が中心になって開催したのが「吹奏楽フェスティバル in いずも」です。
吹奏楽の原点を再確認
「吹奏楽フェスティバル in いずも」は8月9日、大社文化プレイスうらら館だんだんホールにて行われました。
参加したのは出雲地区の小学校・中学校・高校23校です。
運営の中心となっていた出雲市立第三中学校顧問・高橋勇気先生はこう語ります。
「コンクールが中止になり、子供たち、とくに最終学年の子供たちに活躍の場を作ってあげたい、というのが発端でした。また、出雲で開催したこのイベントが、他地域のモデルケースになれば、という思いもありました」
吹奏楽コンクールやマーチングコンテストなどが中止と決まったときは、涙を流す生徒も多く、「もう引退します」と言い出す3年生がいたとのこと。やはり吹奏楽部員には大きなショックだったのでしょう。
しかし、先生方が集まって「吹奏楽フェスティバル in いずも」が企画され、生徒たちの表情にも明るさが戻ったそうです。
先生方は感染症対策に最善を尽くすべく、何度も話し合って、客席を各団体ごとの入れ替え制にする、退出方向を一方通行にする、全座席の消毒をする……といったルールを決めていきました。
そして、開催当日。
高橋先生は出雲三中を率いてステージで演奏し、また、他校の演奏を目の当たりにしてこう感じたそうです。
「照明を浴びて輝く子供たちの表情や、客席で響く拍手……。やはり吹奏楽は人前で演奏し、誰かに聴いてもらい、拍手を送られて達成感が得られるもの。音楽の喜びはこういうものなんだ、というのを再確認しました。音楽室や体育館などでも演奏はできますが、ステージに出て、照明の中、観客の前で演奏するということは子供たちにとって特別な意味を持つことだったことも改めてわかりました。今回のフェスティバルをやって本当によかったと思っています」
ホールに響く明るい音、演奏後に咲いた笑顔の数々が目に浮かんでくるようです。
高橋先生に、最後に全国の吹奏楽部員へのメッセージをいただきました。
「きっと皆さん、しんどい思いをしながら今の状況を乗り切ろうと頑張っていると思います。どうにか活動ができている人も、できていない人も、決してあきらめずにハードルを一つ一つクリアしていき、学校生活をより豊かなものにしていってほしいです」
「吹奏楽フェスティバル in いずも」出場校からのコメント
では、「吹奏楽フェスティバル in いずも」に出場した全23校からのコメントをお読みください。
【小学校】
●出雲市立今市小学校
休校が明け、短い練習期間の中、例年のコンクールへ向かう気持ちと変わらず練習に励むことができました。私たちにとって初舞台となった本番は本当にあっという間で、お客さんを前にして演奏することの喜びを実感することができました。
●出雲市立高松小学校
「最高の演奏をしたい」という目標をもって練習しました。暑い中での練習や後輩に教えないといけないことなど、大変なこともありましたが、あきらめずにがんばりました。本番では、今までで一番満足のいく演奏ができてよかったです。
●出雲市立大社小学校
仲間が困っているときに助け合い、頑張ってきたときには励まし合う。そんな努力をする仲間達と、一つ一つの音を重ね、感動を届けられる演奏をこれからもしていきたいです。今までお手伝いをしてくださった保護者の皆様、良い音作りを助けてくださった先生方、ありがとうございました。
【中学校】
●出雲市立斐川東中学校
久しぶりの本番に向け、積み重ねてきた練習を思い返しながら、目一杯、そして楽しく演奏することができました。3年生8人で演奏した前年度のコンクール課題曲も、思いを込めて演奏することでき、達成感がありました。
●出雲市立斐川西中学校
たくさんの演奏会、そしてコンクールまでも中止という報告を受けたとき、「やるぞ」という熱い思いが喪失感に代わり、悔しくて、泣いてしまうほどでした。あたりまえがあたりまえでなかったのです。だからこそ、コンクールの代わりとしてフェスティバルを開いてくださったことに感謝しています。
●出雲市立第一中学校
今回のステージを通じ、お客様の前で演奏させていただけることの大切さ、そして感謝の気持ちを改めて強く感じました。また、「この日までに」という明確な目標があると、焦りが出る反面、成長できる部分も多くあることに気づきました。今後の成長につなげたいです。
●出雲市立第二中学校
コンクールが中止になり、今回の演奏会が決定したときはとても嬉しかったです。本番では、とても楽しく演奏することができ、3年間吹奏楽を続けてよかったと心から思いました。このような機会を作ってくださりありがとうございました。
●出雲市立第三中学校
コロナウイルスの影響でコンクールがなくなってしまいましたが、それに替わるこのような機会をくださったことに感謝しています。練習が制限された中でしたが、難易度の高い曲を聴きに来てくださったたくさん方々に届けることができてよかったです。
●出雲市立河南中学校
新型コロナウイルスの影響で、コンクール等がなくなってしまい、とても残念でしたが、私たちのために演奏の機会をつくっていただき、お客様の前で演奏することができました。本番の空気を感じながらの演奏は最高でした。ありがとうございました。
●出雲市立浜山中学校
今年は思うような練習ができず、本番に向けて不安がありましたが、ステージで音を出した瞬間、いつもの浜吹らしく演奏を思う存分楽しむことができました。私達の演奏を聴いてもらえる場があったことに感謝します。
●出雲市立南中学校
うらら館で、私たちの練習してきた二曲を、応援してくださった方々に聴いていただくことができました。本番はこれまで毎日丁寧に練習してきたことを、みんなで心を一つにして発表することができたと思います。
●出雲市立平田中学校
コロナ渦でコンクールがなくなってしまいましたが、私たちはこのフェスティバルを目標に部員一丸となって練習してきました。本番はこれまでで1番の演奏ができ、今年のスローガンである「笑満樂奏」を達成し3年生にとっては素敵な思い出となりました。吹奏楽フェスティバルを開催していただき本当にありがとうございました。
●出雲市立佐田中学校
今年はコロナウイルス感染拡大のためコンクールが中止になりやる気をなくしたこともありましたが、理想の音を目指して練習を頑張りました。チームの絆も深まり、一生の思い出に残る夏になりました。
●出雲市立大社中学校
私たちは吹奏楽フェスティバルに向け、心を一つにして練習してきました。コンクールの代わりとなる演奏会でもあり、様々な思いを胸に演奏をしました。演奏後、応援してくださる皆様からの暖かい拍手をいただき、感謝の気持ちで一杯になりました。
●出雲市立湖陵中学校
今年はコロナウイルスの影響で、夏の吹奏楽コンクールはなくなりましたが、吹奏楽フェスティバルという場を設けていただき、私たちが練習してきた成果を発揮できたので、私たち部員にとって思い出に残る夏となりました。
●出雲市立多伎中学校
私たちはコンクールがなくなってしまったという悔しさをバネに日々練習してきました。演奏会では私たちが今できる演奏に様々な思いを込めました。そして、音楽をすることの本当の楽しさや音楽の大きな力を知ることができました。
【高校】
●島根県立出雲高等学校
コロナ禍の中、練習の時間も質も不充分で、コンクールさえもなくなってしまった中、『頑張ろう』という言葉に具体的な目標を与えてもらえたことは私達にとって大きな道標となり、自分たち自身とても成長できました。
●島根県立出雲商業高等学校
今年は出商の特徴のマーチングとステップの曲に力を入れることにし、学校のHPにも演奏をUPしました。「ミス・サイゴン」は今年のマーチングで取り組む曲なので、この後は音と動きで皆さんに元気が届けられるようがんばります。
●島根県立出雲農林高等学校
自粛明けの練習では、かなりモチベーションが下がっていたり、実習棟で全員そろわなかったりと苦労しました。今回が今のメンバーで演奏する最初で最後の演奏会でしたが、部員同士の仲も深まり、練習の成果を出すことができました。
●出雲北陵高等学校
新体制になって初めての本番だったため、メンバーの表情に緊張も見られましたが、練習の成果を十分に発揮することが出来ました。コロナ禍で本番が出来ない状況の中、久しぶりに演奏をすることができ、改めて皆で演奏することの喜びを感じることができました。今後も一人でも多くの方々に感動してもらえるよう、日々変わらず精進していきたいと思います。
●永島学園出雲西高等学校
今年は、コンクールが中止になってしまいましたが、今回演奏の機会を頂けて嬉しく思っています。この演奏会に向けて部員一同精いっぱい練習を重ねてきました。今回の演奏会では先生と部員で気持ちを合わせて良い演奏ができたと思います。これからもさらにレベルアップしていきたいです。
●島根県立平田高等学校
今年は、コンクールがなくなりましたが、このような演奏する機会を作っていただいてとても嬉しかったです。これからアンサンブルコンテストや来年のコンクール、様々な演奏に向けて練習を頑張りたいと思います。
●島根県立大社高等学校
今年はコロナウイルスの影響で大会など大きな行事が中止になり、練習も普段通りに出来ませんでした。ですが、3年生にとって最後となるこの演奏会では、自分達が出来ることを出し切り、悔いの残らない演奏をすることが出来ました。私たちのために協力して下さった方々に感謝致します。ありがとうございました。
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出雲の吹奏楽部の皆さんにとって、「吹奏楽フェスティバル in いずも」がどれほど大きな意味を持つステージだったのかということが痛いほど伝わってきました。
誰も経験したことのない新型コロナウイルスという状況の中、もがき、苦しみ、涙を流しながらも、輝くステージで演奏することができた記憶は、きっとこれからの皆さんの人生を明るく照らし、つらいときに励ましてくれるものになることでしょう。