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149名の部員が躍動!
2023年5月27日、宮城県の聖ウルスラ学院英智高校吹奏楽部の第27回定期演奏会へ行ってまいりました。
ウルスラは学校名のとおりキリスト教系の学校で、県庁所在地で「杜(もり)の都」とも称される仙台市にあります。
吹奏楽部は全日本吹奏楽コンクールに通算6回、全日本マーチングコンテストにも6回出場している、東北を代表する名門バンド。
今年度の部員数は149名です。
顧問の及川博暁先生は数学の教員です。
そんな聖ウルスラ学院英智高校吹奏楽部の定期演奏会は仙台サンプラザホールで開催されました。天井は円形、客席は半円形というホールで、アーティストのライブなどが行われることが多いそうです。
昼・夜の2公演で、1st Stageの2曲に違いがありました。
【昼の部】
●1st Stage
NHK大河ドラマ「独眼竜政宗〜テーマ音楽」(池辺晋一郎)
歌劇「運命の力」序曲(ジュゼッペ・ヴェルディ/杉本幸一編)
吹奏楽のための協奏的一章(芳賀傑)
バレエ音楽「ガイーヌ」第1組曲より(アラム・ハチャトゥリアン/鈴木英史編)
●2nd Stage
ドリスステージ
1年生ステージ
すずめ踊り
男子歌謡
ブラックライト音楽劇『アナと雪の女王』
ポップスステージ
【夜の部】
●1st Stage
NHK大河ドラマ「独眼竜政宗〜テーマ音楽」(池辺晋一郎)
PETALS OF FIRE(チュウ・ティエン)
斐伊川に流るるクシナダ姫の涙(樽屋雅徳)
バレエ音楽「ガイーヌ」第1組曲より(アラム・ハチャトゥリアン/鈴木英史編)
●2nd Stage
ドリスステージ
1年生ステージ
すずめ踊り
男子歌謡
ブラックライト音楽劇『アナと雪の女王』
ポップスステージ
1曲目に《独眼竜政宗〜テーマ音楽》が入っているのには理由があります。
実は、聖ウルスラ学院英智高校の校舎がある場所は、独眼竜政宗=伊達政宗で知られる伊達家が所有していた伊達伯爵邸の跡地にあります。
学校では仙台藩作法(武家作法)を取り入れているなど、キリスト教系の学校でありながら、地元・仙台の歴史や伝統も生かした教育が行われています。
そのため、定期演奏会は仙台や伊達家にちなんだ《独眼竜政宗〜テーマ音楽》からスタートしているのです。
また、2nd Stageにある《すずめ踊り》も、仙台の伝統芸能です。
祭りなどで踊られている「すずめ踊り」を吹奏楽で演奏しつつ、法被に鉢巻き、両手に扇子を持った部員たちが会場中で舞い踊る、という地元を意識した演目になっています。
バラエティ豊かなプログラムが見事
1st Stageは2曲目から、いわゆるクラシック曲が続きました。
吹奏楽コンクールでは自由曲に現代音楽をチョイスするウルスラですが、クラシック音楽の編曲作品である《歌劇「運命の力」序曲》にしても、吹奏楽オリジナル曲の《斐伊川に流るるクシナダ姫の涙》にしても、音のバランスが良いメリハリのある演奏を聞かせてくれました。
やはり基礎がしっかりしていること、低音の支え、中音の充実感があることにより、どんな曲にでも柔軟に対応し、聴き応えのある演奏ができるのでしょう。
特に、《バレエ音楽「ガイーヌ」》は素晴らしく、深い響きがホールいっぱいに充満していました。クラリネットのソロがブラボーでした。
一方、2nd Stageは様々な要素が詰め込まれたプログラムになっていました。
冒頭は「ドリルステージ」ということで、ウルスラの「マーチングバンド」としての一面が楽しめました。
曲は《バック・トゥ・ザ・フューチャー》《残酷な天使のテーゼ》など4曲でしたが、それぞれに曲に合わせた衣装を着用しており、これは準備も大変だっただろうと感心させられました(《残酷な〜》のときはカラーガードが葛城ミサト、ブラス隊は零号機・初号機・弐号機を思わせるオレンジ・紫・赤の衣装でした)。
その後、1年生は初々しく《グレイテスト・ショーマン》を歌・演奏・ダンスで披露し、前述の《すずめ踊り》では客席でも部員が踊って会場を盛り上げ、男子歌謡では《君は薔薇より美しい》《勝手にしやがれ》という昭和の人気歌謡曲で大人世代の共感を呼びました。
プログラムには入っていないものの、パーカッションのアンサンブル、木管アンサンブル、サックスアンサンブル、バリチュー(チューバ・ユーフォ)もありました。これらが休憩時間ではなく、全体のプログラムの流れの中に組み込まれているところに「アンサンブルもしっかり聴いてもらいたい、楽しんでもらいたい」という思いを感じました。
《ブラックライト音楽劇『アナと雪の女王』》は、実は直前のリハーサルまでなかなかうまく行かないところもあり、僕も「本番は大丈夫かな」と心配していたのですが、昼・夜ともに素晴らしいショーになりました。
舞台上の演者とは別に、2階席に声・歌を担当する部員たちがいて、ステージを見ながら合わせていたのですが、まさしくブラボーでした! とくに、アナとエルサ役の部員たちの歌には思わず涙腺が緩むほど……。
及川先生にお聞きしたところ、きちんとした歌を届けるため、ボイストレーニングにも通ったそうです。細かいところまで「できる限りの努力をしよう」という姿勢には脱帽ですし、本番ではその成果が見事に発揮されていました。
そして、最後のポップスステージ。
演奏とダンスが一体になったパフォーマンスは青春感にあふれ、客席で振られるペンライトの光とも相まって、テンションの上がる演目になっていました。
曲は《シェイク・イット・オフ》《おとせサンダー》《新時代》でした。
そして、アンコールのラストには十八番の《フィンガー5コレクション》を演奏。
演奏終了と同時に巨大クラッカーを炸裂させ、大喝采とともに定期演奏会は終了しました。
「学園祭のような」定期演奏会の成功事例
実は、ウルスラは「現代音楽」「マーチング」のほかに、「ポップス」も得意としているバンドです。ほかに、すずめ踊りやクラシックなどもあり、本当にバラエティ豊かな定期演奏会を楽しませてくれました。
それだけではありません。
ロビーに出ると、インスタ映えしそうな写真撮影スポットが用意されていたり、小学生のみチャレンジできるガチャガチャがあったり、部活のPR動画が流されていたり、部員たちの写真が飾られていたり……。
ホール全体に楽しい仕掛けが施されていました。
中でも目についたのは、地元のサンリツ楽器さんによる「ヤマハ管楽器体験コーナー」でした。休憩時間に見に行ってみると、この体験コーナーに人の列がずらり!
小学生くらいの子どもたちが嬉しそうに楽器を吹いているのです。
「高校生のお兄さんお姉さんたちの演奏を見て、自分もやってみたくなったんだなぁ」と微笑ましくなるとともに、こうやってコンサートを通じて楽器や吹奏楽への興味、自分も上手に演奏してみたいという夢や願いがつながっていくことを心からうれしく思いました。
そして、仙台や周辺の子どもたちにそんな夢、願いを与えてくれたウルスラのみなさんに心から感謝したいと思いました。
顧問の及川先生によれば、今回の定期演奏会は「ロビーも含めて、学園祭のようにしたかった」とのことでしたが、その目論見は見事に成功していたと言えます。
演奏後の部員たちの表情もいきいきとしていました。
準備段階から本番まで相当疲れているはずですが、それをまったく感じさせないテンションの高さでした。これが若さか……。
最後に、会場では保護者のみなさん、卒業生のみなさんも全力でバックアップしていました。保護者のおひとりが「(定期演奏会に関わることで)青春を感じている」と笑顔で語っていらっしゃったのが印象的でした。
これからコンクールシーズンが始まります。
ウルスラもコンクール、マーチングとハードな練習の日々が続いていくことでしょう。しかし、そういった大きな目標に向かって取り組んだことが、こうして素晴らしいコンサートを開けるだけの演奏力、パフォーマンス力につながっていくのだと思います。
会場では、宮城県立多賀城高校吹奏楽部や山形県立山形中央高校吹奏楽部など、他校の吹奏楽部員にもお会いしました。ぜひ宮城県内のみなさん、近県のみなさんは(もちろん、遠方の方も)一度ウルスラの定期演奏会をご覧になることをおすすめします。
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