強豪・羽村市立羽村第一中学校の対策

各地で吹奏楽部の活動が再開されてきています。それはとても喜ばしいことですが、新型コロナウイルスの影響が完全に終息したわけではないので、以前と同じように活動するのはなかなか難しいものがあるでしょう。

それは、「感染は大丈夫なの?」という部員自身や保護者の不安もあれば、学校内の管理職や他の先生の目、学校外の様々な立場の人たちの目もあります。

顧問の先生や部員たちが安心し、なおかつ、自信を持って活動するのはどうしたらいいのか……。

すでに様々な模索が始まっています。

東京の強豪で、昨年まで5年連続で全日本吹奏楽コンクールに出場している羽村市立羽村第一中学校吹奏楽部では、顧問の玉寄勝治先生が独自の「感染症対策案」をまとめ、ブログで公開しています。

https://tamayosekatsuharu.blogspot.com/2020/06/blog-post_9.html

この「感染症対策案」では、毎日の練習の流れを、(1)準備、(2)パートごとの練習時、(3)後片付け、(4)終礼、という形で提示しています。それぞれ具体的で、中学生でもわかりやすい内容になっているため、実行と継続ができそうです。

また、楽器練習中のマスクを外した状態での会話には感染のリスクがあるため、楽しい『あいさつのサイン』『反応のサイン』を作ろう、という提案がなされています。

大きな課題である、練習中の部員同士のコミュニケーション。身振り手振りを使ったサインは非常に良いアイデアではないでしょうか。

他にも、用意するもの、フェイスシールドの使用例、ビニールカーテンの作り方なども掲載されています。

ぜひ玉寄先生のブログで全文をお読みください。

秋草学園高校吹奏楽部がエアゾル実験

実際に管楽器を演奏するとき、もっとも気になるのが、ウイルス感染の原因となる飛沫がどれだけ飛ぶのか、ということです。

木管楽器はリードを、金管楽器は唇を震わせて音を出しますし、息をたくさん使って演奏するので、おそらく一般的なイメージとしては「管楽器の演奏はたくさんの飛沫を発生させる」という感じではないでしょうか?

すでに国内外で様々な検証動画が公開されていますが、秋草学園高校吹奏楽部(埼玉)の常任指揮者で、静岡大学吹奏楽団の音楽監督でもある三田村健先生「管楽器飛沫検証ムービー」をアップしました。

いつもユーモアいっぱいの三田村先生!

実際に吹奏楽部員に白い水蒸気に向かって楽器を吹いてもらい、どのくらい揺れるのかという実験です。

ぜひ動画をご覧になっていただきたいのですが、結果から言えば、この検証においてはどの楽器も問題なしのようです。

吹奏楽の迫力あるサウンドは、激しい空気の振動によるもの。この検証を見る限りは、大量の呼気が周囲に撒き散らされるものではなさそうだ、ということがわかります。

飛沫がどの程度の量出るのかといった科学的な検証はまた別になりますが(それを学校現場で検証するのは難しすぎるでしょう)、一つの興味深い実験と言えるのではないでしょうか。

楽器演奏では水蒸気がほとんど揺れません。なお、息をフーッと吹きかけるだけで水蒸気は激しく揺れました。

今後、さらなる科学的で詳細な検証が必要とされるとは思いますが、この三田村先生の動画によって、部活をする上で一定の安心感が得られるのも事実。

もともとは保護者向けに制作したムービーとのことですが、おそらく保護者の皆さんにとっても「自分が思っていたほどにリスクが高いわけではないのだ」という気持ちになったのではないでしょうか。

▼動画はこちら▼

安心して、安全に部活動を

学校の先生や吹奏楽の指導者は、感染症のプロではありません。

しかし、部活動を進めていく上で自らこういった検証をしていくことはとても大切なことだと思います。

他にも、専門家から発信される様々な情報を拠りどころにしながら、玉寄先生や三田村先生のような自分たちなりの安全性の検証や活動する上でのガイドライン作りをする、といった動きが出始めています。

以前ご紹介したように、愛知では愛知県吹奏楽連盟が「吹奏楽部の活動再開に向けたガイドライン」を公式サイトで公開しています。

これらは新型コロナウイルスを考慮した「新しい生活様式」ならぬ「新しい部活様式」と言ってもいいでしょう。

まず安全を第一にすることで、そこに安心感が生まれます。

安全と安心がセットになって広がっていけば、それは吹奏楽部以外の人たちの心の中に「吹奏楽部は大丈夫そうだ」という信頼感をも醸成することでしょう。

とはいえ、全国各地の先生方一人ひとりが、あるいは、個々の吹奏楽部が一からガイドラインを策定したり、検証をしたりするのは大変なことです。

ぜひご紹介したような取り組みを参考にしていただければと思います(なお、今回ご紹介した情報が100パーセント正しいと言い切ることはもちろんできませんので、今後発表される様々な情報を加味しながら、アップデートしていく必要はあるでしょう)。

「新しい部活様式」の中で、最大限に演奏や仲間とともに活動することの喜びを感じられるようにしていかれると良いですね!