東京芸術劇場での初開催は大成功!

5月4日、池袋・東京芸術劇場で開催された伊奈学園(埼玉県立伊奈学園総合高校)吹奏楽部の第37回定期演奏会に行ってまいりました。

例年、地元・埼玉の大宮ソニックシティで開催されてきた定期演奏会ですが、ソニックシティが改修工事中ということで、今年は東京芸術劇場と所沢ミューズ(5月7日)での開催となりました。

これまでコロナ禍以降に足を運んだコンサート会場では、プロのアーティストからアマチュアの吹奏楽部まで、全体的に観客動員に苦戦しているイメージがありました。

埼玉県の学校だけに、その点で少し心配していたのですが、会場に行ってみると客席にはたくさんの観客が詰めかけており、8割以上は埋まっている印象。これはすごいことです。

さすが伊奈学!

今年度の新入部員は78名。全部員で200名を超えるマンモス吹奏楽部です(なお、全校生徒数も2,000人以上います)。

そして、顧問の宇畑知樹先生は伊奈学の1期生にして、吹奏楽部の初代部長という「伊奈学のレジェンド」です。

オザワ部長は以前、NHK Eテレの番組「沼にハマってきいてみた」に伊奈学と一緒に出演させていただき、宇畑先生の指揮で《オーメンズ・オブ・ラブ》を少しだけ演奏しました。

番組内で伊奈学がFoorinとコラボした《パプリカ》は、ときどきNHK「みんなのうた」で流れているのを見かけます。

終演後、宇畑先生にお会いできました。

美しい伊奈サウンドがホールにマッチ

所沢の公演ではステージマーチングなども予定されているそうですが、東京芸術劇場では(もしかしたらホール側の要請で?)オーソドックスな座奏でのプログラムとなっていました。

【曲目】
第1部
アニヴァーサリー・ファンファーレ〜マーチ・エイプリル・メイ
アルメニアン・ダンス パートI
やまがたふぁんたじぃ〜吹奏楽のための〜
サーカスハットマーチ
スピリティッド・アウェイ 「千と千尋の神隠し」より

第2部
マーチ「ブルー・スプリング」
ジェネシス
憂いの記憶 – 吹奏楽のための
交響詩「ローマの松」
ヒットメドレー(ルパン三世、風になりたい、銀河鉄道999、世界に一つだけの花)

アンコール
青春の輝き
オーメンズ・オブ・ラブ

1曲目の《アニヴァーサリー・ファンファーレ》のファンファーレがホールに響いた瞬間、観客がハッと息を飲むのが伝わってきました。

華々しいけれど、決して力押しではない美しいサウンド。

いわゆる「伊奈サウンド」は残響時間がやや長め(よく響く)の東京芸術劇場にはよくマッチし、ホール全体に演奏が心地よく満ちているように感じられました。

また、マーチのトリオ(中間部)が実に優美で、うっとりさせられました。

もし会場に伊奈学をご存知でない方がいらっしゃったとしたら、いわゆる「ブラバン」という吹奏楽のイメージとはまったく違う演奏に驚かれたかもしれません。

もちろん、「ブラバン」というイメージの元気な演奏も吹奏楽の魅力のひとつですし、全国に様々な個性や方向性を持ったバンドがあるのも大好きなところですが、この伊奈学の演奏の美しさは特筆に値するものだと感じました。

伊奈学というと練習熱心な部活で有名でしたが、コロナ禍以降は公立校だけに制限が厳しかったと聞いています。しかし、まさにコロナ禍以降に伊奈サウンドの美しさに磨きがかかったように思います。

特に、《スピリティッド・アウェイ 「千と千尋の神隠し」より》《交響詩「ローマの松」》は実に感動的で、前述したマーチと同様、弱奏部分では時空の狭間をたゆたうような恍惚感を味わわせてもらいました。

《ローマの松》のラストの「アッピア街道の松」はパイプオルガンも加わり、圧巻でした!

また、例年コンクールの課題曲ではマーチを選んでいる伊奈学が、現代音楽である課題曲5を演奏するのを聴けたのも貴重でした。

なお、課題曲全5曲を演奏した後、顧問の宇畑知樹先生が観客にどの課題曲がいいかというアンケートをとりました。オザワ部長は課題曲3《ジェネシス》で拍手をしましたが、意外にも(?)課題曲5が多く、宇畑先生も思わず笑ってしまっていました。

ということで、非常に素晴らしかった伊奈学園吹奏楽部の定期演奏会。まだ生でお聴きになったことがない方はぜひ次回の演奏会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

終演後の部員さんたち。片付け中にお邪魔しました!
皆さん、お疲れさまでした!



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