アンコールは《吹奏楽のための「ワルツ」》
5月1日(日)、東京・初台の東京オペラシティ コンサートホールで開催されたシエナ・ウインド・オーケストラの第52回定期演奏会を見てまいりました。
本公演の特徴は、何と言っても全曲の指揮を人気作曲家・高昌帥(こうちゃんす)さんが務めたこと。
もちろん、曲も《ウインドオーケストラのためのマインドスケープ》《吹奏楽のための協奏曲》という、コンクールの自由曲としても大人気の高昌帥作品を演奏。
いずれもコンクール用のカットバージョンではないフルバージョンでしたが(当たり前ですが)、一般的にカットされる部分も魅力たっぷりでした。
《マインドスケープ》のタイトルは「心象風景」という意味ですが、人の心の無限の広がりや繊細な震えが壮大に表現されているようでしたし、《協奏曲》はシエナの各ソリストが持てるテクニックを存分に発揮しながらスケールの大きい世界観を音楽で奏でていました。
また、フィルハーモニック・ウインズ 大阪が委嘱した《ヴィヴ・アズ・アン・オーク》は、より明快な良曲。聴くのは初めてでしたが、すっかり好きになってしまいました。ぜひ多くのバンドに演奏してもらいたいです。
それ以外に、韓国の作曲家・洪蘭坡(ホンナンパ)が作曲した《故郷の春》は、高昌帥さん編曲のクラリネット協奏曲版として演奏されました。ソリストは、シエナのコンサートマスターである佐藤拓馬さん。原曲は牧歌的な童謡ですが、あたかもオーケストラによる交響曲のような響きが広がり、驚きでした。
高昌帥さんは大阪出身ということもあり、大栗裕作曲の《大阪俗謡による幻想曲》も演奏されました。有名な大阪府立淀川工科高校吹奏楽部の若さあふれる演奏とはまた違い、聖と俗がないまぜになった濃密な生命力を感じさせる演奏でした。
アンコールは、2018年度の吹奏楽コンクール課題曲だった《吹奏楽のための「ワルツ」》。課題曲としては珍しいワルツで、当時指導者の方たちからはテンポのゆらぎなどが難しいと言われていましたが、作曲者本人の指揮とプロの演奏で聴いてみると、非常に美しく楽しい曲だということを再認識させられました。
中間部のフルートとクラリネットの掛け合いは絶妙でした(フルートは東京佼成ウインドオーケストラの丸田悠太さんでした!)。
本公演では、改めて高昌帥作品の巨大さ、奥深さを体感することができ、心からその音楽とシエナの演奏に感動しました。
客席には学生さんの姿もありましたが、高昌帥作品をコンクールやコンサートで演奏する方たちにはこれ以上ない学びになったことでしょう。
今後新たに生まれてくる作品も本当に楽しみです。
なお、会場ではサックス奏者のオリタノボッタさん(NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』に出演したことも話題に)、作編曲家の三浦秀秋さんにお会いしました。
オリタさんは髪が赤、三浦さんは髪がピンク……と実にカラフルなお二人でした。
また、高昌帥さんの奥さんで打楽器奏者・指導者の寺山朋子さんにもお会いできました。
寺山さんには書籍『今日からはじめる! すぐできる! 吹奏楽新時代の指導メソッド』(学研プラス)でもご協力いただきました。
少人数バンドでの打楽器の工夫について、とても効果的なアイデアを多数教えてくださったので、「部員が少なくて困っている」というバンドの方はぜひ参考になさってください。